心の架け橋いわて について

趣旨

fig12011年3月に起きた東日本大震災により岩手県はかつてない大きな津波被害を受けました。特に大槌町では住民の多くが、家族、友人、家、仕事を失い、コミュニティの基盤となっていた地縁、血縁、職縁が分断され、復興におけるメンタルヘルス対策が大きな課題となっています。

私たちは震災後4年間にわたり被災地のメンタルヘルス対策に携わる中で貴重な教訓を得ました。地域メンタルヘルスの問題は精神医療関係者のみによる短期的な支援で解決できるものではありません。分断された地縁、血縁、職縁を被災者の需要を第一に再生していく作業が何よりも大事なことであり、そのためには多分野の専門家が協力しながら長期にわたり全生活支援を進めていくことが必要です。そして、その支援の一環としてこれまで大槌町に提供されたメンタルヘルス支援を長期的かつ全人的な支援モデルに転換していく時機が到来したと考えています。その過程で、行政、医学関係団体、民間企業、NPO法人など複数の支援団体が情報共有をしながら相補的な協働作業を進めているためには、組織間に「橋を架ける」ことが不可欠です。

1933年、三陸沖を震源とする地震が発生し岩手県沿岸は大きな津波被害を受けました。震災復興の道筋が見えぬ中、晩年の新渡戸稲造が岩手県内で講演を行い“Union is Power”という言葉を残しました。「復興」という共通の目的に向かって連携を深め、力を束ねることの重要性は今も変わりません。

私たちは被災地の関係機関、団体との継続的連携のもとに以下の活動を行います。第一に、地域住民が求めているメンタルヘルス支援のあり方を丹念に拾い上げながら、科学的な視点から新しい町作りを支援します。第二に、メンタルヘルスに対する偏見を軽減、払拭するための予防的啓発活動を進めます。第三に、広域精神医療過疎という岩手県の抱える基本問題に対処すべくICT(情報通信技術)を活用したメンタルヘルスサービスを提案していきます。第四に、上記活動を通して災害復興に精通し国際的に通用するメンタルヘルス専門家を育成するとともに、支援者の支援と育成を行います。第五に、これまで手の届きにくかったメンタルヘルスサービスのあり方を地域ニーズの変化に合わせて提案していきます。

2015年3月10日「心の架け橋いわて」は岩手県で9番目の認定NPO 法人として新たな一歩を踏み出しました。私たちの活動が、震災後の岩手における地域再生と新しいメンタルヘルスサービスの構築の一助となることを希望します。

 

2015年10月
認定NPO 法人 心の架け橋いわて
理事長 鈴木 満

 

申請に至るまでの経過

学会の協力のもと、昨年11月より全国から公募に応じたメンタルヘルス専門家が、これまで交代で大槌町を訪問しています。活動資金については、米国日本人医師会などのご尽力によりニューヨークのJapan Societyから3年にわたる活動資金援助が決まりました。さらに米国、英国などの災害メンタルヘルス専門家チームから人材育成支援の申し出を受けています。

私たちはこれら国内外の多職種専門家の篤志と叡智を集めて、メンタルヘルスに関わる様々な復興事業を支援するために、特定非営利団体「心の架け橋いわて」を設立することにいたしました。

 

2012年4月14日
認定NPO 法人 心の架け橋いわて

理事長 鈴木 満

認定NPO法人心の架け橋 定款