気がついた、大切なこと

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私たちの活動すべてに共通するのは、メンタルヘルスに関する予防的啓発教育です。最大の学習法は「教えること」と言われているように、私たちも多くの学びを重ねることができました。遠隔支援に必要な「文化を感じ取る力 Cultural competence」は、現地での体験によって体得できるものです。地域住民や関係機関、他団体との交流、連携によって私たちはその力を身に付け、同時に、私たちが持つ知識やスキルを地域に伝えていく。こうした「学び合い」の蓄積が、地域支援の底上げにつながると期待しています。

1.支援に必要な「文化を感じ取るチカラ」

遠隔地からメンタルヘルス専門家が支援に入る際には、被災地の文化風土を尊重した姿勢が求められます。それは支援対象地域特有の生活ストレス要因や医療システムを把握するための情報収集力であり、被支援者の価値観、信条、宗教、世代差などを感じ取るための知識と共感性、つまり「文化を感じ取る力 Culturalcompetence」に裏づけられるものです。
この力は、被災地域の文化風土、そして被支援者に内在する文化のみを対象とするのではありません。支援する私たち自身が持つ文化、メンタルヘルス専門家としてのアイデンティティも見つめ直し、それを支援活動に生かしていく「気づき」を与えてくれるものです。
その一方で、同行訪問やサロン、こころがけ訪問、職域研修会といった活動を通じて、地域で活動する他団体、支援者の方々に私たちメンタルヘルス専門家の業務を理解し、知識やスキルを学んでもらうきっかけも作ることができたと思っています。
私たちが特に重視してきたのは、精神障害への偏見是正です。生活支援相談員と共有する時間が蓄積され相互信頼が増すことで偏見は軽減しており、メンタルヘルス専門家の業務に関する理解も進んだことを実感しています。

2.国内外の支援団体と連携し、学び合う

小さなコミュニティにおいて円滑かつ幅広い支援活動を行うためには、他団体との連携が不可欠です。大槌町には町内外の支援団体が複数活動していますが、多職種メンタルヘルス専門家から構成される長期支援団体は現在のところこころがけのみであることから、他支援団体からのニーズにも出来る限り対応し相互支援関係を築いてきました。また県境や国境を超えた連携も積極的に行っています。

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