私たちが描く未来

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身体の病気と同じように、心の病気も知識と気づきがなければ知らぬ間に進行し重症化します。精神医療過疎地であるほど、「一刻も早く専門家の助けが必要な状態(精神科救急事例化)」になることを防ぐことが重要であり、そのためには本人を含めたコミュニティが「メンタルヘルスの知識を持ち、対応できる予防力」が必要です。私たちがこの活動のゴールにしているのは「精神科救急事例化を最小とするコミュニティの実現」。未来を支えるコミュニティのあり方として、大槌町から「先導モデル」を発信していくことを目指します。

こころがけが描く未来

日本精神科救急学会のプロジェクトとして始まったこころがけの活動は、ステージI(任意団体としての被災地視察、情報収集、非定期的アウトリーチ)、ステージII(NPO法人としての予防的啓発活動、定期的多職種アウトリーチ、支援者支援、他支援団体との連携)を終え、2015年4月からステージIIIに入りました。
ステージIIIでは認定NPO法人への昇格をはじめ、継続的啓発教育によるメンタルヘルス・リテラシーの向上、地域在住人的資源の育成、地域医療資源との協働を進めていくことを計画しています。また、活動開始から4年以上にわたり現地で多職種アウトリーチ体験を積んできたこころがけのメンバー達が、今後「災害メンタルヘルスの専門家」として活躍することを期待するとともに、被災地支援プロジェクトを通して得た教訓を生かしながら国際的視点から災害精神医学の発展に寄与することを目指しています。
これからの数年間は、急速な高齢化、仮設住宅から復興住宅への住み替え、巨大防潮堤建設による住環境の激変、PTSD事例の顕在化、通信インフラの超高速化、新たなICT活用法の開発、遠隔医療の法的整備などによるメンタルヘルスケアへの需給関係の大きな変化が予想されます。
その頃に迎えるステージIVでは、その変化に対応していくための多様な人材確保と安定した組織運営という難題に挑戦していくことになります。精神医療過疎地だからこそ、より良質で効率的なサービスを提供するという発想をコミュニティで共有していきたい、そして、私たちがゴールとして目指している「精神科救急事例化を最小とするコミュニティの実現」に貢献したいと考えています。

これからの先導的活動

◆地域・職域支援活動

引き続き、地域や職域での長期的な支援を行っていきます。ただし、現在の「出前型」多職種アウトリーチだけに頼るのではなく、段階的に支援の担い手を現地在住支援者に移行していくことを念頭に置いた研修会の開催、ICTを活用した支援者支援の体制を強化します。

◆地域在住人的資源の育成

現在行っている研修会の受講者を中心に岩手県在住のインターンを選出。それぞれの持ち味を生かしてサロンや職域研修会での補佐的活動を始め、将来的には被災地のメンタルヘルス支援の中核を担う人材になるよう育成をしていきます。

◆ICTを活用した遠隔支援モデル

「精神医療過疎地への遠隔支援」をより効率的、効果的に行うためのツールとして、ICTのさらなる活用を進めます。支援メンバーおよびインターンの双方向性コミュニケーション技能を高め、遠隔地にいる支援者と地域住民の方々との情報共有が平易にできるような方法を提案していきます。

◆国内外の団体との連携の強化

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これまで4回開催した宮城県の「からころステーション(一般社団法人震災こころのケア・ネットワークみやぎ)」、福島県の「なごみ(特定非営利活動法人相双に新しい精神科医療保健福祉システムをつくる会)」との協働事業「ここ・から・なごみ」シンポジウムを継続開催し、県境を越えた議論を進め、共通する課題への取組みを強化します。また米国のJapan Society、米国日本人医師会などとの協力関係を発展させ、国連世界防災会議パブリックフォーラム採択により拡がった国際的発信の機会を増やしていきます。